

クライアントからの問い合わせは、いつも突然やってきます。
「DSAが終わると聞いたのですが、うちのキャンペーンは大丈夫ですか?」
そう聞かれてから慌てて確認するのではなく、代理店側であらかじめ状況を整理しておくことが重要です。
Googleの公式発表によると、2026年9月以降、動的検索広告(DSA)を含む一部の従来機能はAI Maxへ自動アップグレードされる予定です。また、同時期からGoogle広告の管理画面、Google Ads Editor、Google Ads APIでDSAの新規作成ができなくなるとされています。
複数のクライアントを抱える代理店にとって、これは単なる機能変更ではありません。クライアントごとに、準備状況の確認、説明、設定方針の判断が必要になる運用上の節目です。
この記事では、移行の全体像、クライアントへの説明、設定判断、移行後の確認ポイントを、代理店の実務フローに沿って整理します。
「9月に自動で切り替わるなら、それまで待てばいい」と考えることもできます。
ただし代理店の立場では、自動移行だけに任せる前に、いくつか確認しておきたい点があります。
1. 設定方針を決めないまま移行される可能性がある
自動移行では、既存のDSA設定がAI Maxへ引き継がれる予定です。一方で、AI Maxでは検索語句マッチング、テキストカスタマイズ、最終ページURL拡張など、運用上の判断が必要な機能が増えます。
特に、テキストガイドラインやブランド関連の制御は、クライアントの表現ルールや承認フローに関わります。クライアントが想定していない広告文や表現が使われないようにするためにも、移行前に確認しておくことが重要です。
2. 移行後の検証時間が短くなる
自主的に移行準備を進めれば、既存キャンペーンとの比較や、段階的なテストを行いやすくなります。
一方で、自動移行のタイミングまで待つと、移行後に成果変動が起きた場合、その要因を切り分けにくくなる可能性があります。
3. 9月以降はDSAの新規作成ができなくなる
Googleの公式発表では、2026年9月以降、DSAの新規作成ができなくなると説明されています。
そのため、移行直前になってから設定やレポートを確認しようとすると、十分な準備時間を確保しにくくなる可能性があります。
この期間は、クライアント別に優先順位をつけ、移行前に確認すべき項目を整理するための準備期間と考えるのがよいでしょう。
「DSAはどう変わるのか」「AI Maxでは何ができるのか」と聞かれたときに説明しやすいよう、主な違いを整理しておきます。
AI Maxには、DSAにはなかった、または限定的だった機能が複数含まれています。
機能1:検索語句マッチング
AI Maxでは、登録キーワードだけでなく、ユーザーの検索意図をもとに関連性のある検索語句へ配信を広げることができます。
Anagramsの解説でも、検索語句マッチングはAI Maxの主要機能の一つとして整理されています。たとえば、登録していない検索語句でも、ユーザーの意図が近いと判断されれば広告表示の対象になる可能性があります。
ただし、すべてを任せるのではなく、広告グループ単位でオン・オフを切り替えられるため、拡張したくない領域は制御することもできます。
機能2:テキストのカスタマイズ
AI Maxでは、既存の広告文、ランディングページ、広告素材などをもとに、ユーザーの検索内容に合わせた広告文を自動生成できます。
一方で、自動生成された広告文がブランドのトーンや表現ルールに合うとは限りません。
そのため、テキストガイドラインを使って、含めたい語句や避けたい語句をあらかじめ設定しておくことが重要です。
機能3:最終ページURL拡張
AI Maxでは、登録したランディングページだけでなく、サイト内の関連性が高いページへユーザーを誘導することができます。
ECサイトのように商品ページやカテゴリページが多い場合は、有効に働く可能性があります。
一方で、特定のLPや問い合わせフォームに誘導したいBtoB案件では、意図しないページへ遷移する可能性もあるため、事前にオン・オフを判断する必要があります。
クライアントが気にしやすい「ブラックボックス感」
AI Maxについて、クライアントからは「P-MAXのように中身が見えにくいのではないか」と懸念される可能性があります。
この点については、検索語句、広告見出し、ランディングページの組み合わせなどを確認できるレポートが用意されていることを説明するとよいでしょう。
完全にすべてを人が制御する運用ではありませんが、何が起きているかを確認しながら改善していく運用は可能です。
成果データは「参考値」として扱う
Googleの公式発表では、AI Maxのフル機能を利用した広告主が、検索語句マッチングのみを利用した場合と比べて、同等のCPAまたはROASで平均7%多いコンバージョンまたはコンバージョン値を獲得したと紹介されています。
また、Anagramsの解説では、AI Max利用によるコンバージョン増加に関する複数の数値が紹介されています。
ただし、これらの数値はすべてのアカウントで同じように再現されるものではありません。商材、アカウント構成、月間コンバージョン数、ランディングページの状態によって成果は変わります。
そのため、クライアントに説明する際は「必ず成果が上がる」と伝えるのではなく、「改善余地を検証するために、段階的にテストする」と説明する方が現実的です。
移行を始める前に、クライアントごとに以下の項目を確認しておくと、設定ミスや後からのトラブルを防ぎやすくなります。
1. DSAの過去レポートを保存する
移行後に、過去のDSAデータを同じ形で確認しづらくなる可能性があります。
移行作業に入る前に、DSAの検索語句レポートやコンバージョンレポートをエクスポートしておくと安心です。
2. 月間コンバージョン数を確認する
月間コンバージョン数が少ない広告グループでは、AI Maxの機械学習が十分に機能しにくい場合があります。
SO Technologiesの解説でも、コンバージョン数が少ない場合の段階的な導入について触れられています。
そのような場合は、最初からすべての機能をオンにするのではなく、検索語句マッチングのみを試すなど、段階的な導入を検討します。
3. 既存キャンペーンをコピーしてテスト環境を作る
本番キャンペーンをいきなり変更するのではなく、既存キャンペーンをコピーし、AI Maxを有効化したテスト環境を作る方法があります。
Riddle Senseの解説でも、テストや段階的な検証の重要性が紹介されています。
移行前後の成果を比較しやすくなり、クライアントへの説明材料にもなります。
4. 競合ブランドキーワードの除外設定を確認する
検索語句の拡張により、意図しない競合関連クエリへ配信される可能性があります。
移行前に除外キーワードリストを確認し、必要に応じて追加しておきます。
5. 計測ツールのURLパラメータ設定を確認する
URL拡張をオンにする場合、計測ツールのURLパラメータが正しく引き継がれるかを確認する必要があります。
外部計測ツールを使っている場合は、想定外のURL遷移や計測漏れが起きないか、事前にテストしておくと安全です。
6. ピン留めアセットを確認する
テキストカスタマイズをオンにすると、既存の見出しや説明文の扱いに影響が出る可能性があります。
ピン留めしているアセットや、必ず表示したい表現がある場合は、移行前に棚卸ししておきます。
7. テキスト自動生成とURL拡張のオン・オフをクライアントと合意する
AI Maxで特にトラブルになりやすいのは、自動生成テキストとURL拡張です。
どの機能をオンにするか、どこまでAIに任せるかを、クライアントと事前に合意しておくことが重要です。
8. テキストガイドラインを設定する
商品名、ブランド名、必ず含めたい表現、避けたい表現を整理し、テキストガイドラインとして設定します。
特に、法務確認が必要な表現や、業界特有のNGワードがある場合は、移行前に確認しておきましょう。
すべてのクライアントを同じ順番、同じ設定で移行する必要はありません。
クライアントの状況に応じて、優先度や設定方針を分けて考えることが重要です。
タイプA:完全一致・フレーズ一致中心のキャンペーン
完全一致やフレーズ一致中心で運用しているキャンペーンは、AI Maxによる検索語句拡張の効果を検証しやすい可能性があります。
月間コンバージョン数が十分にある場合は、比較的早めにテスト移行の候補にしてもよいでしょう。
ただし、いきなり全面移行するのではなく、既存キャンペーンとの比較ができる状態で進めるのが安全です。
タイプB:LPが少ない、または特定ページへの誘導が必要な案件
BtoB商材やリード獲得型の案件では、問い合わせフォームや特定LPに誘導したいケースが多くあります。
このような場合、URL拡張をオンにすると、意図しないページへ遷移する可能性があります。
まずはURL拡張をオフにし、検索語句マッチングやテキストカスタマイズから検証する方が安全です。
タイプC:ECサイトや複数LPを持つ案件
商品ページやカテゴリページが多いECサイトでは、URL拡張が有効に働く可能性があります。
ただし、計測ツールのパラメータ、在庫切れページ、キャンペーン対象外ページなどに遷移しないかを事前に確認する必要があります。
タイプD:月間コンバージョン数が少ないアカウント
月間コンバージョン数が少ないアカウントでは、AI Maxの学習に十分なデータが集まりにくい可能性があります。
この場合は、すべての機能を一度にオンにするのではなく、まずは一部機能だけを試し、成果を確認しながら段階的に進める方が現実的です。
AI Maxの導入後にトラブルが起きるとすれば、主に次の2つが想定されます。
1つ目は、意図していない広告文が配信されること。
2つ目は、想定していないページへユーザーが遷移することです。
この2点を防ぐために、移行前の承認フローを整えておくと安心です。
確認・承認したい3つの項目
承認後の確認ステップ
この流れを代理店内で標準化しておくと、クライアントごとの対応がぶれにくくなります。
AI Maxは、設定して終わりではありません。
特に移行直後は、AIが学習しながら配信を広げていくため、定期的な確認が必要です。
毎週確認したいこと
4週間後に振り返りたいこと
移行から一定期間が経過したら、次の観点で振り返ります。
この振り返り結果は、クライアントへの報告資料にも活用できます。
「移行した結果どうだったか」を説明できるよう、移行前後のKPIを記録しておくことが重要です。
準備:今すぐ〜5月
クライアントごとのDSA利用状況を確認し、移行優先度を整理します。
あわせて、過去レポートの保存、除外キーワードの確認、テキストガイドラインの草案作成を進めます。
テスト移行:5〜7月
優先度の高いクライアントから、既存キャンペーンをコピーしてテスト移行を開始します。
検索語句、広告文、遷移先URLを確認しながら、クライアントへの説明材料を整えます。
本番移行:7〜8月末
テスト結果をもとに、クライアントと合意した設定で本番移行を進めます。
移行後は週次確認の運用を定着させます。
強制移行前:9月前
残っているDSAキャンペーンを確認し、移行漏れがないかをチェックします。
移行完了状況、設定内容、クライアントへの説明履歴を記録しておきます。
自動移行を待つという選択肢が完全に間違っているわけではありません。
ただし、代理店としては、移行前に状況を整理し、クライアントへ説明し、必要な設定を確認しておくことで、余計なトラブルを避けやすくなります。
AI Maxへの移行は、単なる機能変更ではなく、今後の検索広告運用を見直すきっかけにもなります。
9月の自動移行に追われるのではなく、今のうちに確認できるところから準備を始めておきましょう。
AI Maxへの移行後は、検索語句、広告文、遷移先URL、CPAやROASの変化を継続的に確認していくことが重要です。
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